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羽原肅郎「三原色とオブジェ」展 覚え書き

桑沢デザイン研究所時代、羽原肅郎
は、倉俣史朗と同窓であった。


鹿島出版会の雑誌SDのデザインエディター時代、
1975年、<SD>にて、初めて日本に「シェーカーの建築とデザイン」を。

1978年には、「デザインの原点/ブラウン社における造形の思想とその背景」日本能率協会
(向井周太郎との共著)ブラウン社のデザイン・フィロソフィーを紹介している。

当時未だ無名の写真家牛腸茂雄には、やはり<SD>にて建築写真の撮影を依頼している。



<折形デザイン研究所の「折る、贈る」2003年ラトルズ> では、
マルセル・デュシャンに贈りものをする」というテーマで、
ピーター・シュラムボーム「科学者の台所」のシリーズの一つ、
ウォーターケトルを紹介している。



8年ほど前、羽原先生を自分に引き合わせて下さったのは、
確か山口信博さんだったように記憶している。
ル・コルビジェレマン湖 小さな家に掛けられていた絵の話、ブラウン社のこと…
デザインや美術の教科書には出て来ないお話を沢山話して下さった。
羽田空港付近の川縁から拾い上げたルフトハンザ航空のカトラリーをお譲りしたら、
著作の「構造の芸術」を。
中国から渡来したであろう日用品に隠された黄金比や、眼鏡とデザイン…etc
日用品から現代美術/音楽まで、モダニストの眼で語られている。


書棚に並ぶ本の中で「構造の芸術」は、トニー・ゴドフリー「コンセプチュアル・アート」、
バーナード・ルドフスキーの一連の著作とともに好きな本になった。
共通するのは、どれも著者独自の(古くならない)センスと言葉で語られていて、かつ
その旋律が自分にとって好ましいものであるということなのだろう。



副題は、「あるいはデザインのトポスへ!」まさに、今デザインには、詩学が必要だと思う。
先生が教えてくれた、アレキザンダー・ドルナーの「THE WAY BEYOND 'ART'」
「美術を超えて」美術の彼方には、何があるのだろう。



今回の展示の中の<三原色 同面積 円>は、「色彩の永久機関」のように見えた。
今後、先生のような人は出て来ないだろう。
46年間、カレンダーというものを買ったのは、今回が初めてである。


澄 敬一