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裸形のデザイン フランス

裸形のデザイン
ドメイン・ドゥ・ボワビュシェ
http://www.boisbuchet.org/
6月25日から10月9日



ドメイン・ド・ボワブシェは2009年より夏の間一般公開しており、その広大な公園のような敷地に点在する国際的な建築家による建物や、シャトー内にて行われる特別展を見るため、地域の方々を始め世界中からビジターが訪れております。ヴィトラ・デザイン・ミュージアムを創設来の館長として、これまでに数しれない展覧会を世に送り出してきたアレキサンダー・フォン・フェゲザックは、現在、ドメイン・ドゥ・ボワビュシェの代表として、その精力を従来の美術館の規範ではできないようなテーマを例外的に表現してみせること――学際的創造性のための実験の場というボワビュシェのアイデンティティを反映させる展覧会の実現――に注いでおります。


今年の展覧会「裸形のデザイン」は、ボワビュシェが日本や、建築並びにデザインという日本の典型的文化との大変近しい関係があるということを強調するものです。何年にもわたり、日本のデザイナーや建築家は毎年のようにボワビュシェでセミナーを行ってきました。事実、ボワビュシェに建てられた最初のパヴィリオンは、著名な建築家、坂茂氏がワークショップの一環として実現したものであり、この建物は彼にとってヨーロッパに建てた初めての恒久的な建物でもあります。また、2009年には19世紀の伝統的な日本の家屋をそのオリジナルな状態を保ったままボワビュシェに移築しております。


「裸形のデザイン」では、アルミニウム製の日本の日用品をお見せしますが、これは工業デザイナーの大西静二氏、澄敬一氏が何年もかけて情熱的に集めてきたものです。それらは汚れを取り除かれ、塗装やレーベル、その他過剰な装飾を削ぎ落とされ、それらの本質的な形になるまで“裸にはがされ”ました。その簡素さ、匿名性、むきだしの素材感は日用品の、静かなけれど澄みきった詩情を湛えています。


200点近くの道具類、料理器具、家電、家具、おもちゃなどはすべて1910年から第二次世界大戦後の経済成長が本格化する1960年頃までに作られたデザイナー不明のものです。人口が多く、天然資源の乏しい島国として、日本は長年、資源の再使用と再利用をしてきました。例えば、今日においても、アルミニウム缶のリサイクルにおいては世界トップの座を保っています。特に戦中戦後においては、通常は鉄や木、あるいは陶器などでつくられるものもアルミニウムで作られました。アルミニウムは精製にはコストがかかりますが、その後の加工は大変簡便だからです。


代用品というのはともすればチープさを伴ったり、ほとんど注意を集めないものですが、流行を装ったり、はかなく一時人目を引くようなことから免れたそれらは、ものの満ち溢れた我々の世界において、静かで価値ある証拠として、物質と文化の意義ある相互作用のように思えます。さらに、生の素材のみ残し、その本質的な機能に集中するという清浄のプロセスは、日本のデザインの特徴である、素材を生かす優れた技術と洗練の域まで達した簡素化を象徴しています。


自然に対する日本人の伝統的な敬意の姿勢と資源の持続可能な使用は、ほとんどほかに匹敵する国のない大量消費によって、長い間かき消されていました。未だにこの国に大きな影響を与えている近年の経済危機と本年3月に起きた未曾有の地震災害は、このような文化の伝統的な価値を再び目覚めさせています。今日の状況においては、削減という手段によって、機能性と美を互いに調和させるという日本人の特別な素質は、私たちすべてにとっての大切な例――時間を超越したデザインや私たちの世界のあるべき姿のモデルとしての役割を果たしています。


「裸形のデザイン」は長い間空で、修復されていないボワビュシェ城の空間に見事なまでに合います。共に歴史の中で忘れ去られ、裸にされた時に初めて、その真の本質や目的のための純粋着想を現すのです。まるで裸の王様のように。会場構成はハンブルグ在住のデザイナー、ダニエル・ケルンが、できるだけシンプルな方法を用いつつ、NYのパーソンズ美術大学の学生と協働で実施しました。


2010年に日本のブランドMUJIのために山口信博氏が実現した、大西、澄両氏のコレクション展示をもとに、展覧会の主題コンセプト作成とその構成は、日本人のキュレーター、鴨澤章子が担当しております。世界的な成功を収めたMUJIのこのプロジェクトに対するサポートは、理にかなった選択となりました。というのも、ミニマムかつ匿名のデザインで、資源を無駄遣いすることなく製造される同社の製品とそのコンセプトは、同展の展示品と通底しているところが多いからです。


ドメイン・ドゥ・ボワビュシェは「裸形のデザイン」プロジェクトに関わったすべての方々にお礼を申し上げます。特にコレクションの発起人である大西静二、澄敬一両氏が作品を快く貸し出してくださったことと、Uniqa保険グループのご協力に感謝いたします。尚、同展はボワビュシェ城での公開の後、国際的に巡回されることを予定しております。


http://facesofdesign.com/event/les-formes-nues-naked-shapes





http://www.design-museum.de/

大西さんと、国産の旧いアルミニウム製品を集め分析するようになった数年前に思い描いていた
海外での展示が、こうして実現してとても嬉しい。
協力して下さった皆さん、この場を借りてお礼申し上げます。

澄 敬一