8年前、push me pull youには、「アーティストと名乗る人」がよく訪れた。
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Ohne Titel (ereid)
Untitled (ereid)
1929
Kurt Schwitters (1887 - 1948)
collage on paper
purchased with support from the BankGiro Lottery
sigmar polke
untitled, 2007, mixed media on fabric, 75x79
例えば……
歳は、30前後だろうか…作品を見てコメントが欲しいと言う。
差し出されたポートフォリオを捲り、
「ポルケやシュヴィッタースとかが好きなの?」
「わかりません。僕は(自分以外の)作品は見たことが無いので誰の影響も受けていません」と言った。
はて?
影響を受けていない?
…この世に生を受けてから30年間、山にでも籠って何も見ず聴かず生きてきたわけではないだろう。
会話をしても、どういうわけでこの作品を生み出したのかは判然とした答えも返ってこない。
説明が出来ない。ただなんとなく出来上がったらこうなったそうだ…
「オリジナルの作品」は知らないが、作品が形を変えて「商品になったもの」は知っているということ。
シリア北部アレッポ市の北東ユーフラテス川流域で発見されたおよそ今から11000年前の壁画
有史以前から(呼び方は様々だが)芸術家という職業は在ったのだと思っている。
フォーチュンテラー、ウェザーマン、巫女、祭司……etc
彼等は、きっと感受性・センスが常人より優れていただろう。
配下や民衆に何かを伝えるためのマニエラは、それぞれに歌だったり絵や彫刻、もしかすると料理だったかもしれない。
”環境が今日の彼を創った”
衣食住。
着るもの、食べるもの、住まい…
すべて、「商品ではなかったもの」から具体物へ、経済理論的抽象を施され、「商品」になり「消費者」を生む。
冷凍食品、お菓子、ケロッグもラーメンもプレタポルテもプレファブも、
コンセプト、仕組み、パッケージのデザインの元を辿るとそこには、芸術と呼ばれた作品が在る。
これからの美術も同様に、「産業の触媒」であり「未来の予告」で「世界に方向を与える」と思っている。
”COMING SOON”
彼は30年、自分はもう47年間も商品に浸かっている。
なぜ、最近になって公にこのような駄文を出しているかというと、だんだん昔の記憶が薄れていると自覚したからである。
「忘れる前に書いてみたらどうだろう、覚え書き」ということ。
今日の「ナショナルジオグラフィック ニュース」を添付しておこう。
<最新の研究によると、睡眠中の脳で「何を覚えておくか」「何を忘れるか」の選択が行われ、人の“賢さ”が養われているという。
記憶は睡眠中に脳に固定され、後から取り出せるようになっている。今回の研究では、さまざまな先行研究をふまえ、
睡眠と記憶に関する新たな説を唱えている。脳内に固定された記憶は必ずしも正確ではなく、
長期的に役に立つように形を変えられているという。そして、睡眠による記憶の選択のおかげで、
覚醒中の洞察力が生まれ、推論が可能になり、抽象的な思考が促進されるという。
研究チームのリーダーで、米インディアナ州にあるノートルダム大学の認知神経科学者ジェシカ・ペイン氏は、
「睡眠中の脳は決して“愚か者”ではない。インプットされた情報を片端から記憶として固定するわけではなく、
何を覚えておくか、何を忘れるか“計算”している」と話す。
「例えば、細かいところまでしっかり記憶として残るのは、感情に訴える要素だ」。
ペイン氏の研究チームは、被験者に対し、前景側に大破した車、背景側にヤシの木が並んでいる場面を見せる実験を行った。
車を覚えていてもヤシの木は忘れてしまう人が多く、特に一晩眠った後はこの傾向が顕著だった。
脳は場面全体を記憶に残そうとするのではなく、最も感情に訴える要素、つまり最も重要と思われる要素だけを
記憶するよう場面を再構築していると考えられる。脳活動の測定データでもこの説を支持する結果が出ている。
脳の中で感情や記憶固定に関係する部位は、覚醒時よりも睡眠時の方が定期的な活動を活発に行っているのだ。
「感情に関わる情報を選択記憶するという働きには意味がある。私たちの祖先にとって、
ヘビの居場所の記憶は生死に関わるし、部族内に著しく卑劣な者がいたら、覚えて避けようとしただろう」
とペイン氏は説明する。
「記憶という機能は、単に過去を覚えておくためというよりは、
さまざまな可能性のある未来を事前に予測するために存在するのだ」。 >
澄敬一